ロシア文化紹介

ロシアの文化は、ロシアの豊かな自然や長い歴史の中から生み出されてきた。

バレエ、オペラ、音楽、絵画、美術や文学など数多くの分野において多くの才能あふれる人材を輩出するとともに、世界に影響を与えてきた。

 

ロシア建築

 ルーシは10世紀まで木造建築のみであった。キエフ・ルーシ(現ウクライナ中心)が興り、「黄金の環」と呼ばれるウラジーミル、ロストーフ、モスクワなどの都市が形成され、城壁や教会建築が活発化した。ピョートル1世(初代ロシア皇帝)によりヨーロッパ文化がロシアに積極的持ち込まれ、新首都サンクトペテルブルクは、モスクワとは全く異なる性格をもつ都市へと発展した。このときヨーロッパで絶頂だったバロック様式がサンクトペテルブルクを中心に発展した。専制時代は、古くからロシアの伝統とヨーロッパの潮流のせめぎ合いであった。

 ロシア革命(ソビエト連邦成立)以降、過去を否定し全く新しい建築を模索するロシア・アヴァンギャルドが登場し、構成主義が一世風靡した。しかしナショナリズムの台頭で再びスターリン様式のような古典に回帰、長い停滞期に入った。

 ゴルバチョフにより始められた「ペレストロイカ」により、建築も長い停滞期を脱した。改革開放が進み大学教授が実際の建築設計を行えるようになった。すでに西側では死んでいた「ポスト・モダン」が一大ブームとなった。またアヴァンギャルドや構成主義の復活を試みるものも現れたが、多くはものまねに終わった。

 ソビエト後は建築技術・資本など様々なものがロシアに流入した。経済はしばらく低迷したが、石油など豊富な資源により徐々に成長過程に入り、建築界も西側のコピーから従来のロシア建築の見直しや融合など新たな段階に入った。

 

ロシア文学

 いわゆるロシア文学が生まれたのは比較的遅く17世紀になってからであり、詩と戯曲から始まったが、間もなく非常に豊かな小説の伝統が生まれた。

「ロシア文学の黄金時代」にはフョードル・ドストエフスキー、ニコライ・ゴーゴリ、レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフといった偉大な小説家たちが現れ、世紀の終わりには劇作家アントン・チェーホフも登場した。

 20世紀に入ると、象徴主義と未来派の詩が、強力な理論活動と共に新しい文学の飛躍をもたらしたが、すぐにソ連の迫害に直面することになった。それでも20世紀にはセルゲイ・エセーニンやウラジーミル・マヤコフスキーなどのような詩人や、マクシム・ゴーリキー、ボリス・パステルナーク、ミハイル・ショーロホフ、ミハイル・ブルガーコフなどの小説家が輩出した。ヴァシリー・グロスマン、ヴァルラーム・シャラーモフ、アレクサンドル・ソルジェニーツィンらのソ連の全体主義体制を告発する作家たちは特に強くスターリンによる抑圧を被った。

 ソ連の崩壊と共産主義体制の消滅により、1990年以降には新しいロシア文学が生まれている。

 

ロシア音楽

 ロシアは広大で多様な文化を有する国であり、そこで生活する多くの民族が、それぞれの音楽を各地で発展させてきた。ロシア音楽はその特徴として、ロシア帝国からソビエト連邦、現代のロシアの時代にかけて存在し続ける民族的マイノリティ(ユダヤ人、ウクライナ人、ジプシーなど)から多大な影響を受けている。

 ロシア音楽の音楽スタイルは、儀式的な郷土民謡からロシア正教会の宗教音楽、19世紀に繁栄した古典派、ロマン派などのクラシック音楽まで多岐に渡る。20世紀にはソビエト音楽が隆盛するとともに、さまざまな形式のポピュラー音楽が興り、今日のロシア音楽の諸相の一部を形成している。

 ロシア革命の後、ロシアの音楽は劇的な変化を遂げることになる。1920年代の始めには、「革命的な精神」の高まりからアヴァン=ギャルドの実験的時代が訪れた。音楽の新しい諸潮流(合成和音に基づく音楽など)が、現代音楽協会などの熱狂的な団体によって提唱された。の時代を代表する作曲家は、セルゲイ・プロコフィエフドミートリイ・ショスタコーヴィチアラム・ハチャトゥリアンであった。その後、ゲオルギー・スヴィリードフアルフレート・シュニトケソフィア・グバイドゥーリナを始めとする若くソビエトの作曲家があらわれる。

 今日、ロシアのポップ・ミュージックは発展し、MTVロシアやMuz-TV、ラジオ局などのポップ・ミュージック・メディアを通じてメインストリームとして成功を謳歌している。数々のポップ・アーティストが近年になって頭角を現し始めた。ロシアの2人組グループt.A.T.uは、今日における最も成功したロシアン・ポップバンドである。他に人気のあるアーティストとしては、ユーロビジョン・ソング・コンテスト2008で優勝したことで知られるジーマ・ビラーンを始め、フィリップ・キルコロフヴィタスアルスーらが有名である。

 

ロシア映画

 ソビエト連邦では、レーニンの「すべての芸術の中で、もっとも重要なものは映画である」という考えから国立映画学校を作るなど、プロパガンダの手段として映画が重要視された。ロシアの映画産業は国営化されており、ソビエト連邦共産党による独裁政治が提唱する哲学や法律に支配されていた。この時代の著名な作品としては、セルゲイ・エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」 (1925)、「アレクサンドル・ネフスキー」(1938)、「イワン雷帝」(1944)などがある。

 ソ連の崩壊によって、ロシアや他の連邦国では実質的に良質な映画の製作がストップしてしまった。10年以上の間に制作されたのはソ連時代の全盛期に比べればわずかな数の映画で、その多くは評価が高かったものの幅広く公開されることはなかった。そうした作品の中にはニコライ・ドスタルの 「君はどこにいるの?」"Oblako-ray" (1991)やニキータ・ミハルコフの「太陽に灼かれて」(1994)などがある。

 新しいロシア映画界では、芸術性よりも利益が追求される傾向がある。2000年代前半になると、ロシアの経済復興による国家助成金の増加や、人気テレビシリーズを足がかりに登場した新人達の映画界進出、彼らの登場を助けた有能なプロデューサー達の活躍が目立った。アンドレイ・ズビャギンツェフの「父、帰る」(2003) や ボリス・フレーブニコフとアレクセイ・ポポグレプスキーの「Roads to Koktebel」(2003)、コンスタンチン・ロプシャンスキーの「醜い白鳥」(06)といった作品は国際的に高い評価を得ている。 

 

ロシア料理

 ロシア古来の農民料理は、ロシアの気候や風土や農民文化を反映し、全体としては保存食を多用した煮込み料理や炙り焼き料理、スープが多いが、ロシアそのものが帝国として広範かつ多様な文化を包含してきたため、今日のロシア料理は豊穣かつ多面的な側面を持っている。

 ロシア料理の基礎は、しばしば極めて厳しくなる気候風土に暮らす農村住民のあいだから生まれた農民の料理であり、豊富に手元にあった魚、家禽、野生の鳥獣の肉(ジビエ)、キノコ、ベリーや蜂蜜を組み合わせたものだった。またライ麦、小麦、大麦、キビ等の穀物は、パン、パンケーキ、粥、クワス、ビールそしてヴォッカの原材料となった。風味豊かなスープやシチューは、旬の、あるいは貯蔵可能な食材、魚、そして肉を中心としたものである。冬が長く厳しいため、様々な野菜のピクルスや果物のジャムなど多くの保存食料が作り出された。また、ロシアの伝統的なオーブンには焜炉が無かったため、調理法はロースト、パン、鍋にふたをしてオーブンで加熱した煮込み料理など、オーブンを使った焼き物が主であり、現在もなおロシア人の大多数にとり主食であり続けている。

 ロシアに信徒が多いロシア正教会では大斎の際に食事制限が存在するが、ヒマワリの種子は禁止リストになかったため、ロシアでは教会法と矛盾なく食用可能なヒマワリ種子を常食とする習慣が発達し、19世紀半ばにはロシアは食用ヒマワリ生産の先進国となった。またこの経緯からロシアではソ連時代からヒマワリを国花としている。

 

世界遺産

ロシア国内には、ユネスコ世界遺産リストに登録された文化遺産が16件、自然遺産が10件存在する。

■文化遺産

サンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群 (1990年)

キジー・ポゴスト(キジ島の木造教会建築)(1990年)

モスクワのクレムリンと赤の広場(1990)

ノヴゴロドと周辺の文化財(1992年)

ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的遺産群(1992年)

ウラジーミルとスーズダリの白亜の建造物群(1992年)

セルギエフ・パサドの至聖三者聖セルギイ大修道院の建造物群(1993年)

コローメンスコエの主の昇天教会(1994年)

クルシュー砂州(2000年)

フェラポントフ修道院の建造物群(2000年)

カザン・クレムリンの歴史的・建築的複合体(2000年)

デルベントのシタデル、古代都市、要塞建築物群(2003年)

ノヴォデヴィチ修道院の建造物群(2004年)

ヤロスラヴリの歴史地区(2005年)

シュトルーヴェの測地弧(2005年)

ボルガルの歴史的考古学的遺産群(2014年)

スヴィヤジツクの集落島の生神女就寝大聖堂と修道院(2017年)

■自然遺産

コミの原生林(1995年)

バイカル湖(1996年)

カムチャツカの火山群(1996年、拡大2001年)

アルタイの黄金山地(1998年)

西カフカース(1999年)

中部シホテ-アリン(2001年)

ウヴス・ヌール盆地(2003年)

ウランゲル島保護区の自然体系(2004年)

プトラナ台地(2010年)

レナ石柱自然公園(2012年)

ダウリヤの景観群(2017年)

 

祝祭日

1月7日 クリスマス(正教会のクリスマス)

1月14日 旧正月

2月23日 祖国英雄の日(元ソ連地上軍とソ連海軍の日)

3月8日 国際女性デー

5月1日 春と労働の日(旧メーデー)

5月9日 対ドイツ戦勝記念日(ナチス・ドイツが連合国に無条件降伏した日)

6月12日 ロシアの日(ロシア共和国がソビエト連邦に対する主権宣言を採択した日)

11月4日 国民団結の日

    (ロシア・ポーランド戦争においてロシア国民軍がポーランドからモスクワを解放した日)

12月12日 憲法記念日(現行のロシア連邦憲法が制定された日)

12月31日ー1月1日 年末休日

 

スポーツ

 ソ連時代からオリンピックで毎回優れた成績を残しており、メダル獲得数では上位にランクされることが多い。ロシアは1980年のモスクワオリンピックを始め、国際スポーツ競技大会の開催地となることも多い。2014年には黒海沿岸のソチで冬季オリンピック(ソチオリンピック)を、2018年にはワールドカップ(2018 FIFAワールドカップ)を開催することが決定している。

 国内リーグにはロシアサッカー・プレミアリーグ、アイスホッケーのコンチネンタルホッケーリーグ (KHL) などがある。また、ソ連崩壊の前後から多くのロシア人指導者が国外に移住し、陸上競技、フェンシング、体操競技、新体操、シンクロナイズドスイミング、フィギュアスケートなどの種目で世界各国の選手を指導している。ロシア・旧ソ連発祥のスポーツとしては、日本の柔道と西洋のレスリングなどをベースに編み出されたサンボが挙げられる。しかし一方でドーピング問題も発生するなど、アンチドーピング対策も大きな課題となっている。